
At WorkWith:スイン
コーヒーを知るデザイナーとしてHITCHに加わり、ブランドとグッズをつくり、イベント会場やカウンターでお客さまと向き合ってきたスイン。現在はTinge of Soulとともに、ブランド企画をはじめ、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。

ソウル・松坡区文井洞の小さなカフェ、HITCH。扉を開けると、赤いレタリング、青いカーペット、チェック柄のコースターが目に入ります。カップもテープも、コーヒー豆の袋もショッピングバッグも、一貫してHITCHらしい。その世界を考えた人は、デザインだけでなく、カウンターでコーヒーを淹れ、展示会でもお客さまに会っていました。ブランドデザイナーのチェ・スインです。
HITCHがデザイナーを探し始めて、4か月が経っていました。外注したり、何人ものデザイナーと仕事をしたりしても、コーヒーを知らずにつくられたデザインは、現場となかなかかみ合いません。そんなとき、コーヒーの仕事とデザイン会社の仕事を行き来していたスインと、偶然縁がつながりました。30代前半から半ばまで、街のロースタリーのブランドとグッズをつくり、コーヒーの展示会やSNSでその名を伝え、店でお客さまを迎えました。最後の出勤日には、常連のお客さまが彼女のためにブログを書いてくれました。
現在はTinge of Soulと、ブランド企画やOEM製品のデザインを進めています。デザイナーの役割とは何か。彼女に聞きました。
デザイナーの役割とは
HITCHの最後の出勤日に、常連のお客さまが「ラストダンス」というブログを書いてくれたそうですね。
30代前半から半ばまでHITCHで働きました。人生でも大切な時期だと思うのですが、その頃がいちばん楽しく、デザイナーとしても誇らしく仕事をしていました。だから「ラストダンス」という文章が、本当にありがたかったんです。
会社に頼まれた案を機械的につくって渡す仕事ではありませんでした。自分のデザインで商品を売り、結果を確かめ、たくさんの人に関心を持ってもらう、その一連の流れを経験したんです。とても小さな始まりから、私なりにかなり大きく育つまで、デザインには確かな役割がありました。その時間を記録に残したいほど、最後の日を良い思い出として覚えています。
スインさんにとって、デザイナーとはどんな人ですか。
以前は文字どおり、デザインだけをする人だと思っていました。でもAIが急速に進歩して、単にビジュアルをつくること自体には魅力を感じにくくなりました。今は、ブランディングをする人がデザイナーだと思っています。案をつくるだけでなく、最後の販売まで一緒に進む。それが私の定義です。
頭の中の考えを目に見える形にし、哲学のような見えないものを触れられる物にして、実際の販売につなげる人、ということでしょうか。
そうです。視覚的な成果物だけをつくって終わるなら、どちらかというとアーティストに近いと思います。実際に売れるところまで走り切ってこそ、私にとってのデザイナーです。
考えが変わる決定的なきっかけはありましたか。
HITCHで過ごした時間が、いちばん大きな転機でした。自分のデザインが売れること、デザインへの反応が実際の売上につながることを、現場で経験したんです。その喜びは大きかった。リブランディング前と後の売上を両方経験して、デザイナーとしての視点がすっかり変わりました。
デザインだけなら、アーティストに近い。最後の販売まで実現してこそ、私の考えるデザイナーです。スイン
街のロースタリーがHITCHになるまで
最初に担当したとき、HITCHはどんなお店でしたか。
街の小さなロースタリーでした。コーヒー豆を卸すB2Bの取引先が、数軒あるくらいのカフェです。オーナーの夢は事業を育てて、B2BとB2Cの両方を安定させ、きちんとブランドをつくることでした。最初は漠然としていましたが、一緒に励まし合い、展示会に出たり、デザインを一つずつ積み重ねたりするうちに、自然と規模が大きくなりました。
オーナーとは、どう知り合ったのですか。
もともとは人づてに存在を知っているだけでした。親しい友人がそこで働いていて、コーヒーを理解するデザイナーを探していると聞いたんです。外注したり、コーヒーを知らないデザイナーと仕事をしたりすると、豆の特性や店内動線など実務の部分で、何度もずれが生まれていたそうです。4か月間見つからなかったところに、コーヒーの仕事とデザイン会社を行き来していた私のタイミングが、ちょうど合いました。
HITCHという名前と「If you’re on the same way, let’s go together.」という言葉は、どう生まれましたか。
いちばん大切だったのは、オーナーの頭の中の考えを見える形にすることでした。目指すコーヒーの核は、誰でも難しく感じず、気軽に楽しめることだったんです。
HITCHという名前は、ヒッチハイクからオーナーが決めました。「Let’s go together」は一緒につくった言葉です。誰もが近づきやすい言葉で、ヒッチハイクのように軽やかな気持ちでコーヒーを楽しむブランドにしよう、と考えました。
鮮やかな赤と青をメインカラーに選んだ理由も教えてください。
オーナーは少しキッチュな雰囲気にしたかったんです。当時、私たちがその雰囲気を感じた色が赤と青でした。彩度を強くして、一目で目に入るようにしよう、と。まだ小さなブランドでしたから、大きな展示会で人の目を引くには、それくらい鮮明な色が必要でした。



グッズも幅広くつくっています。ブランドを広げる戦略だったのでしょうか。
最初は、コーヒー以外にも見せられる物があるほうがブランドは強くなる、とオーナーが考えていました。そこで店内でお客さまがよく目を留めるカップや衣類から、一つずつ増やしました。コーヒーを出発点に、接点を少しずつ広げたんです。
特に反応が良かったグッズは何ですか。
コースターやブランケットなど、主にカフェの中で使う物です。店外で使うのはステッカーくらい。周囲がオフィス街なので、マスキングテープのような文具も好評でした。
コーヒーとまったく関係のない物も一つありました。ライターです。たばこを吸うお客さまがレジで「これもください」と、気軽に手に取るんです。実は一番売れたのがライターでした(笑)。基準は明確で、価格の高い衣類を除けば、近所で飲み物を買うついでに、無理なく一緒に買える物であることでした。
デザインだけでなく、バリスタとして働き、広報やマーケティングも担っていたそうですね。
営業以外のマーケティングは、デザインとほぼ一体でした。私はもともと大きな会社に入りたいとは思っていませんでした。もっと動きのある働き方をしたかったし、帰属意識も大切でした。大きな組織には決められたことだけをする硬い印象がありますが、小さな場所なら、自分のアイデアや仕事がどんな成果を生むか、目の前で経験できます。それが私に合っていました。
最初からマーケティングを担当しようと思っていたわけではありません。デザインをしながら「もっと売れるには、売上を伸ばすには」と考えていたら、自然に「これをやってみませんか、あれはどうですか」と提案するようになりました。一緒に話し合って実行するうちに、仕事の範囲が広がったんです。
売上は大きく伸びました。特に効果があったのは何でしょうか。
ブランドが人の目にはっきり映るようになったことです。決め手は「カフェショー」のような大規模なコーヒー展示会への参加と、SNS。この二つでした。
反対に、挑戦してうまくいかなかったことはありますか。
YouTubeです。私は企画というより出演でしたが、ロースターとオーナーが映像にとても関心を持っていて、始めてみました。
結局止まったのは、専任の人がいなかったからです。実務を担う人が本業と映像を兼ねるので、準備する時間が足りませんでした。売上が増えれば、日々こなす本業も増えます。一日中焙煎を終えた後に長い動画を編集するのは現実的に難しく、自然と止まってしまいました。


オーナーと感覚をすり合わせる
新しいクライアントとは、何から話しますか。
まず、そのブランド固有の物語を聞きます。もともとの個性や歴史を十分に聞いてから、クライアントが目指すブランドの参考資料をいただきます。
私は、誰もが自分の基準を持つデザイナーだと思っています。美しい、良いと感じる点は人それぞれ。デザイナーの私が良いと思うものと、オーナーが良いと思うものは違って当然です。だから、感覚をすり合わせる過程が一番大切。まず相手が良いと感じる感覚を自分の中に集め、ブランド本来の質感へ、違和感なく溶け込ませることが核になります。
クライアント自身も、望むものが明確でない場合がありますね。「すっきり上品に」といった依頼など。
そうです。そこで、私からも参考例を提案します。「こんな感じはいかがですか」と具体的な画像を見せる。すると初めて「そちらではなく、こういう感じです」とはっきり教えてくださることが、よくあります。
数か月前、日本のクライアントとの仕事でも似たことがありました。参考資料に忠実にデザインしてお渡ししたのですが、実はその資料の雰囲気ではなく、私個人の作風を求めていたんです。単なる外注ではなく、チェ・スインというデザイナーとの協業を期待されていた。その意図を理解してからは、自分の色をグッズにしっかり反映でき、気持ちよく終えられました。微妙な誤解を減らすには、形式的な報告書だけより、参考例を頻繁に交換して、たくさん話すことが一番です。
提案だけで終わらず、印刷の立ち会いや紙選び、メジャーでの採寸まで行うそうですね。なぜ、そこまで自分で担当するのですか。
小さなブランドとの仕事が多いからか、私には実際にでき上がる物が一番大切です。小さなブランドの予算には限りがあります。有名なブランドエージェンシーにはデザイナーとは別に実務の細部を担当するアシスタントもいますが、小さなブランドが協業するには費用が大きい。だから、デザイナー自身が実務も責任を持つべきだと思っています。
最後の実物がきちんと仕上がってこそ、胸を張って報酬をいただけます。過程でなるべく多く対話し、必要なら何度も修正します。修正のたびに回数を数えて追加料金をいただく方法は、私の性格に合いません。最後まで一緒に考えて、全員が納得する実物をつくることが何より大切です。
AI時代にデザイナーがすること
AIが数秒でそれらしい案をつくる時代です。デザイナーとして不安はありませんか。
画面の中で案をつくって渡すだけだったら、AIの進歩は不安だったと思います。技術が完成に近づくほど、すぐに置き換えられるでしょうから。
でも、ここまで話した仕事はAIに代われません。オーナーが本当に望むものを細かく聞き、メジャーで箱の寸法を合わせ、別の構造を提案し、実際に印刷を発注し、指先で紙に触れて最適な一枚を選ぶことです。AIもデータから提案できますが、ブランドの望む結果に正確にたどり着くには、現場で重ねた経験と対話が欠かせません。だから不安ではありません。むしろ賢くAIを使って、もっと良い結果にしたいですね。
実務では、AIをどのように使っていますか。
手間のかかる反復作業や補助的な仕事に使います。パッケージのモックアップにデザインを載せたり、簡単な素材をつくったり。以前は有料素材を買ったり、無料素材を探したりしていた時間を、今はAIに下準備を任せて、本質的な企画や細部を整えることに使えます。
全体の骨格と質感は自分でつくり、AIでは少し加工する程度です。初めから全部任せると、後で細かく直したいときに手を入れにくいんです。今後は技術が良くなるかもしれませんが、今はまだ、人が直接触れて直すほうがずっと繊細です。
現場で私がする仕事は、AIには代われない。だから、むしろ不安ではありません。スイン
スインと仕事をするには
Tinge of Soulのパッケージデザインは、OEM・ODMパートナーシップのオプションサービスです。事前相談で成果物、印刷仕様、発売日程を詳しく確認し、作業範囲と見積もりを確定します。
- ブランドコンセプト
判断の基準をつくる
製品の位置づけ、対象となるお客さま、核となるメッセージを整理し、デザインの明確な基準を定めます。
- ビジュアルの方向性
第一印象を設計する
色、書体、グラフィックを組み合わせ、一貫したブランドの第一印象をつくります。
- パッケージへの展開
販売単位に合わせる
個別の箱から小売用・ギフト用のセットまで、実際の販売単位と寸法に合わせてデザインを展開します。
- 生産への引き継ぎ
製造へつなぐ
紙の選定、印刷立ち会いの基準、抜き型線など、最終入稿データと仕様書を整理して製造へ引き継ぎます。

